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【雑談】アステカ式陣痛緩和法、アステカの双生児、他

こちらの記事では、ネットで見かけるアステカの奇妙な話をとりあげます。

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【アステカ式陣痛緩和法と、アステカの双生児の話について】(2014.9.10)

近頃(2014年現在)、ネットでしばしば見かけるも、アステカの本の中では見かけない&出典がわからない話、「アステカの出産法」と「アステカの双子」について。

■「アステカ式陣痛緩和法」
アステカ式陣痛緩和法
http://smallmemo.undertonemc.com/?eid=1000683
http://latinwotaku.com/archives/5800504.html
ネットにて、近頃(2014年ごろ)、ツイッターなどで見かけるようになった話なのですが…。
「アステカ式陣痛緩和法」というものがあるそうで。
どういうものかといいますと、「初産の妻が出産するさい、夫は家の天井部分にて、自分の金玉にひもをつけて待機して、奥さんが陣痛で痛いときにそれを引っ張って痛みを共有する」ものだそうです。
しかし、「アステカ式」とついているのに、ツイッターなどで目にすることはあっても、私も含めて、アステカ好き(一次史料を読む方も含めて)の間で誰も、アステカ関連の本の中で、アステカ帝国にそんな風習があったという話を読んだことがないのです…。本当に、出典はなんなんでしょう?
ネットでの記事によると、メキシコ西部のウィチョル族の風習とありました。
ウィチョル族が住んでいる地域は、アステカが征服しようとしてボロ負けしてついに征服できなかったタラスコ王国(ミチョアカン)の、更に西なんだぞ…(小声)。アステカ帝国の支配下だったことはない地域のはずだ…。なのに、なぜこれに「アステカ式」という名前がついているのか謎です。
また、本当にウィチョル族にそんな風習があったのかも、言い伝えレベルのようで、さだかではなさそうです。
もし万が一、アステカ系の本に記述を見つけましたらご報告いたしますが、本当に、アステカについての本の中で、読んだことがないんですよ…。

追記(2016年12月)
アステカ族(=メシカ族)は、元は北方に住んでいて、南下してメキシコ盆地までやってきて都市を築いたわけですが、もともとは今のウィチョル族の近くに住んでいた?という説もあるらしい(言語が同系統なんだそうだ)。
また、あんな過激なものでなくとも、旦那さんが奥さんの出産を模倣するCouvade(クーバード、擬娩)の風習そのものは、北メキシコに、広くあるものらしい。
ただ、やはり、くだんの風習は、Couvadeとしても過激ですし、あれがアステカ族(=メシカ族)の風習として出てくるアステカの本はやはり見つからないので、アステカ族の風習としてとらえてしまうのは、かなりの無茶がある気がします。

■「アステカの双子の儀式」
アステカの双子を調査中
http://okwave.jp/qa/q1229802.html
そして、「アステカの双子の儀式」。
「古代アステカの山岳部族では、双子が生まれると引き離され、それぞれ穴倉に閉じ込め、別々に育てられる。16歳、つまり成人に達すると、全身に戦いの化粧をほどこされて、牢から連れ出される。祭場にて、武器を持たせられ、互いに相手を殺すように言われる。生き残ったほうが成人かつ神の体現者となる。彼は一族から歓呼で迎えられる。身を清めるため、川で水面をのぞき込んだとき、見覚えのある顔を見つけ、誰を殺したのかを知ることになる」。
これも、「アステカ関連の本の中で、アステカにそんな風習があったという話を読んだことがない」というのが私の周辺のアステカ好きの見解で、出典がわからないです。陣痛緩和法と同じく、こんなおいしいネタなら本に載っていそうなのに、本当に見たことがないのですよ…。アステカについての一般書はもちろん、サアグンとかドゥランなどの史料というべき本の中にも見当たらないらしい。
山岳部族の風習とあるので、もしこれが存在するとしたら、いわゆる「15世紀、テノチティトランを中心に100年ほど栄華を誇ったアステカ族(=メシカ族)」ではなくて、ごく一部の部族の古い風習で、おおざっぱに古いメキシコ=アステカのイメージで単語が使われているのかもしれませんね…。
アステカは、古代アステカとか言われてしまうと古めかしいですが、発展を始めて権勢を誇ったのは15世紀ごろの100年ほどの短い間なので(その前は弱小部族で、メキシコで暮らすたくさんの部族の一部族)、意外と範囲が狭いです。

追記(2016年12月)
この話が有名になったのは、吉田秋生氏の漫画『Yasha(夜叉)』に、アステカの双子のエピソードが登場するからのようです(コミックス版だと4巻(1998年初版)の冒頭。ドラマ版で第3話。「夜叉 アステカ 双子」で検索したら、ドラマ版のあらすじを書いてくださっているサイト様がでました)。
そして、この漫画のほかにこの話が載っているという本の情報が、ネットでは見つけられていません。
『夜叉』4巻の他のページで、1995年のジョン・ラッシュの『双子と分身』の文章や画像が引用されているので、これが元ネタ本かと思ったのですが、『双子と分身』にはアステカの双子の話は載ってなかったです。他の本に出典があるのか、または漫画なので作者の創作なのか、まことに謎です。
ここまでは確認できたので、ご報告いたします。

余談ですが、山本亜季氏の漫画『ヒューマニタス』(2016年11月初版)の第1話が、15世紀中央アメリカが舞台で、アステカの双子の儀式をモチーフにした漫画でした(ただし、アステカの単語は出てこなくて、今は失われた人間の多様な文化のひとつという描き方です)。実際にあんな風習がどこかにあったのかどうかはおいておいて、熱い名作だからおすすめするぞ。


と、いうわけで、これらの風習は、「アステカ」(=狭義でいうメシカ族)の風習ではなく、ごく一部の部族の風習(ただし、真偽はさだかではない)に、単に、古代メキシコのイメージとして「アステカ」の単語が使われているのではないかと考えているのですが、正直、これらの話が、出典もはっきりしないまま「アステカ」の風習の話として世の中に定着しそうで心配です。

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【日本版ウィキペディアに項目があったが、神話本で見かけない「死神ミキストリ」について】(2014.9.23)
(追記:2015年10月現在、該当の記事「ミキストリ」は修正され、暦記号ミキストリの記事になっているもよう。参考:古いバージョン でも、ネット上のあちこちに誤解が残っているかもしれないので、記事は残しておきます。)

日本語ウィキペディアに項目があるも、これまたアステカ関連の本でさっぱり見かけない、死神ミキストリについて。
ウィキペディアのミキストリより引用しますと、「ミキストリ(Mextli, Miquiztli)は、アステカ神話に伝わる死神。戦争と嵐をもたらす神で、武装した戦士の姿で誕生したといわれる。古代アステカでは、毎年何百もの生け贄がこの神に捧げられた。テクシステカトルと同一視される。また、メキシコの語源とされる。」と、あるのですが……。
アステカ関連の本でさっぱり見かけなくて、英語版ウィキペディアに行くと、月の神メツトリにリンクがあって、日本語版ミキストリのようなぶっそうな記述が全然ない。あきらかに別の神。
出典が『悪魔事典』 新紀元社、2000年、374頁とあるけど、それの記事のもととなった本はどれなんだ…。
……というわけで、一体、これまた、出典なんなんだ…と言っていました。

が!!約翰さまが!なぜこんな記述ができたのか、推測してくださいました!

「アステカにはミキストリという名の死神がいる。」の検証が載っている記事
有名だからといって信頼できるとは限らないアステカ神話のあれこれ・その3

すっきりしました…。
要約してみます(あわせて、約翰さまの記事を必ずお読みくださいね)。

【1】アステカの神ウィツィロポチトリは、戦争の神であり、武装した姿で生まれ、たくさんの生贄がささげられた。彼の別名に、Mextli(メシトリ)というのがある。
【2】これによくにた名前で、Metztli(メツトリ)という、アステカの月の神がいる。
【3】また、メツトリとは別に、テクシステカトルという月の神もいる。テクシステカトルは、「死(ミキストリ)の日」を司る神である(ここでいう死(ミキストリ)とは、アステカの暦で使われる20の記号のうちのひとつ。「死」の記号が使われる日だから、「死の日」)。しかし、アステカ神話の本の中に、テクシステカトルの別名がミキストリ(死)であると誤解させるような翻訳の文章があった。
【4】以上がブレンドされて、新紀元社『悪魔事典』において、ウィツィロポチトリの性質をもつ死神ミキストリが登場し、それが日本語版ウィキペディアに記載される。なので、「死神ミキストリ」は、日本限定の神で、本来のアステカ神話には存在しない。

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【日本の本やサイトで「女神」と書かれるヨワルテクトリは、海外では「男神」らしい】(2015.4.25)

太陽神トナティウの妻、夜の太陽ヨワルテクトリ…という記述を見ますが、海外では「男神」らしく、「女神」なのは日本だけであるらしい。詳しくは、約翰さまのサイトにて…

有名だからといって信頼できるとは限らないアステカ神話のあれこれ・その1の、「トナティウの妻は夜の太陽ヨワルテクトリ」

つまるところ…
『ヴィジュアル版世界の神話百科アメリカ編』の日本語版で、ヨワルテクトリが紹介されたさい、太陽神トナティウの対になる神「counterpart」が、「配偶神」と翻訳される。原書では「He(彼)」で、書くまでもなく男神。
その後、これを参考に、土方美雄著『マヤ・アステカの神々』にて、ヨワルテクトリが「太陽神トナティウの妻とされる、「夜の太陽」を象徴する神」と書かれる。
その後、ネットのサイトにものり、ヨワルテクトリとはトナティウの妻である女神だという誤った設定が日本限定で広まる。

……ということだったらしい。

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