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レビュー:エジプト神話耽美小説『王の眼』

江森備(えもりそなえ)氏による、エジプト神話に題材をとった全4巻の「耽美」小説。

2003年に、3巻まで図書館で読み(上のレビュー漫画は当時のもの)、衝撃を受けて、最終巻の4巻を入手して読む勇気が長らくでなかったのですが…。
それから9年後の2012年9月、ピクシブにこの漫画を投稿したところ、コメント欄でエジプト神話絵師さんから、エジプト神話のおすすめ本を教えてもらい、それを読んで、それまで興味がなかったエジプト神話のイラストを突如として描きはじめました。
そして、ついに、思い切って4巻をアマゾンで買って読みました。勇気を出して買って読むまでに、9年もかかりました…。

4巻では、これまで父方の部族アンジェトの巧みな教育によって傲慢な少年王になり、アンジェト族にいいように利用されていたハルが、ついに、真実に目覚めて王として開眼する壮大な成長物語の骨格があって、大いに盛り上がります。
そして、しっかり「耽美」です。ハルが宿敵セティとついに手と手をとりあいます(つまりはそれ以上の関係)。また、セティのみならず、ハルの兄のアンプまで、二人そろって、3巻のセティ並のひどい目に…(でも、セティとアンプは血のつながっていないとはいえ、父と息子なのに、これまでは親子の縁が薄くて、あんな極限状態に置かれてようやく…のエピソードと、その後、さらっとアンプがセティを「父」とよんでるのは心に残ったなあ…)。
もっとも、火のないところに煙が立っているわけではなく、元ネタのエジプト神話に、セトとホルスの男色神話があるので、なんともいえませんが…。

4巻購入の機会に、1~3巻を読み返してみましたが、今回はエジプト神話を知っているので、キャラクターのモデルや神話の元ネタに気がつくたびに、ニヤリの連続です。
でも、男色シーンにまで、「セティの唇から銛で突き刺されるような河馬のような悲鳴が…」とか出てくると、笑ってしまうなあ…(神話では、セトはホルスと、カバに化けてどちらが水に長くもぐっていられるか勝負する。ホルスの母のイシスは、セトを銛でつついて攻撃し、息子を応援しようと試みる)。 ちなみに、現実のカバの鳴き声は「ブオッ!ブオッ!」という、ぶっとい声だそうだ。

それにしましても、「耽美」小説…。
昨今の「ボーイズラブ」なら、表紙で美形の男性キャラどうしが仲よさそうにしているので「それ」と一目で分かるのですが、「ボーイズラブ」の前身である「耽美」ジャンルだと、今回のように外見が普通の小説と変らない場合もあり、普通の歴史小説だと思って手にとったら「耽美」だった、というのが、けっこうな確率で起こりえる気がします。「図書館で歴史小説を借りたら、先に借りた人が「このホモ読むべからず」と落書きをしていた」という話を聞いたことがあります。
なぜ、アマゾンの書籍紹介やレビューで、「そういう小説だ」とはっきり書いてないんだろ。
1、2巻でどうやら一般小説らしいと思って油断して読んでいて、3巻でいきなりアレがきたときの衝撃たるや…。そういうシーンが来る、と分かっていたら覚悟して読めたのに…。
もちろん、3巻は3巻で、貴公子から奴隷の状態へと落とされて、どん底から「王」へと変貌をとげるセティが壮絶なのですが(セティに力を貸す、アソ女王が格好いい)、初読の時はショックが強すぎて、その辺りに気づく余裕がなかったなあ…。

面白かった、と堂々と言い切るには、入っているシーンがシーンだけに、少し恥ずかしいですが、人間関係や勢力争いのストーリーの骨格は、骨太でとても読み応えがありました。
なんだかんだと書きましたが、たとえ読者が読後になんだかんだ言おうが、最後まで読ませた時点で、プロとして作者の勝ちですので、お許しください。
あ、でも、耽美やボーイズラブを読むのに抵抗がないエジプト神話好きな方には、おすすめいたします。

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